序章
羽を切る夜明け
夜明け前、ジルは最後の橋で長い銀髪を切り、白い王都の名と役目を背後へ置く。白梟から与えられた呼び名を振り切ろうとしながら、過去を完全には消せないまま、黒い王都ノクティルムへ入る始まりの話。逃亡ではなく、自分の居場所を選び直す物語の出発点になる。
Part I: Demon Capital Arc
序章から第26話まで。黒い王都ノクティルムで、ジルが黒燈ギルドと出会い、自分の居場所を選び直す物語。
Episode List
序章
夜明け前、ジルは最後の橋で長い銀髪を切り、白い王都の名と役目を背後へ置く。白梟から与えられた呼び名を振り切ろうとしながら、過去を完全には消せないまま、黒い王都ノクティルムへ入る始まりの話。逃亡ではなく、自分の居場所を選び直す物語の出発点になる。

第1話
雨の路地で負傷したクロを見つけたジルは、追われる身でありながら捕獲具と魔獣から助ける。安宿で薬草と薬布を使い、冷たい言葉と丁寧な手当てを残したことが、ルシと黒燈へつながる最初の痕跡になる。小さな救助が、後の大きな接点へ変わっていく。

第2話
月燈館でクロとジルが再会し、治療者を探していたルシが銀髪の新入りと初めて向き合う。ジルは初対面のふりをし、クロの反応とルシの疑念が、静かな探り合いの距離を作る。名前を明かしきらないまま、互いの出方を測る夜になる。

第3話
月燈館で得た反応を持ち帰ったルシは、黒燈本部でカイン、ゼル、ダリウスへジルの情報を報告する。白梟の回収対象である可能性と、無理に暴かない黒燈の方針が並べられる。疑うことと守ることの線引きが始まり、クロの匂いも判断材料になる。

第4話
初対面から二日後、ルシは月燈館を再訪し、クロを介してジルにもう一歩だけ近づく。黒燈の方針、カインとゼルの存在、翌夜の時計塔接触が示され、ジルは警戒したまま誘いを受ける。黒い灯りの外縁へ踏み込む入口になる。

第5話
止まった時計塔でジルはカインとゼルに会い、黒燈が自分を所有物として扱わないか見極める。刃を向ける者、補う者、情報を握る者の距離を測りながら、暫定協力へ踏み出す。白梟とは違う組織の温度を初めて確かめる。

第6話
金羊亭と地図を前に、黒燈とジルは白梟の動きと街の退路を同じ盤面で見る。完全な信頼ではなく、互いの手札と線引きを確認しながら、初共同任務へ進むための条件を整える。逃亡者だったジルが、誰かと同じ地図を見る夜になる。

第7話
地下水路での初共同任務。ジルは黒燈とともにミロ救出へ動き、敵を消すのではなく、証人と証拠を残すやり方を目にする。黒燈の保全方針が、説明ではなく現場の判断で示される。ジルの中で、任務の意味が少し変わり始める。

第8話
廃礼拝堂の夜、白梟の手がノクティルムへ伸びていることと、内部情報漏洩の気配が浮かび上がる。ジルは追跡される側でありながら、黒燈の任務の中で自分に向けられた刃の形を知る。街の闇が、隠れ場所ではなく戦場へ変わる。

第9話
連続事件の報告を受け、ギルド長ダリウスは黒燈が証拠を握るが裁く主体ではないという線引きを示す。ジルは、白梟と違う組織のあり方を、命令ではなく判断として見せられる。黒燈の長の言葉が、以後の行動基準になる。

第10話
西区の煮込み屋で、ジルは生活音と人の熱を持つノクティルムの一面に触れる。同時に、サイラス再拘束と子どもの救出を通じて、黒い王都が単なる隠れ場所ではないと感じ始める。街の匂いが、警戒だけではない記憶として残る。

第11話
尋問と仮登録を通じ、ジルは所属を示す証と、白梟が使ってきた縛る首輪の違いを突きつけられる。黒燈の仮登録は保護と監視の間にあり、ジルはその境界を疑い続ける。名を預けることと奪われることの差が、静かに問われる。

第12話
黒銀の仮札が、身体に刻まれる印ではなく、本人が持つ証としてジルへ渡される。強制ではない所属の形に触れたジルは、警戒を解かないまま、黒燈の中に一時的な居場所を得る。持つ証が、縛る印とは違う意味を帯びる。

第13話
短い睡眠の後、ジルたちは朝靄の錆びた庭園へ向かう。黒燈での一時滞在が始まる一方、白梟の工作は止まらず、次の証拠と救出対象へつながる任務が動き出す。休息と事件の間で、ジルの立ち位置が静かに揺れ続けていく。

第14話
噂が刃になる夜、白梟の工作とジルをめぐる呼び名が街の中で形を持ち始める。銀羽、回収対象、役割名として扱われる違和感が、ジルの過去の傷を静かに開いていく。名前ではなく役目で呼ばれる痛みが、前に出てくる。

第15話
赤い部屋に残された毒の痕跡を追い、黒燈はオスカー救命と白梟の薬の線をつなげていく。ジルは被害者を切り捨てない黒燈の動きの中で、自分の知る白梟の手順を思い出す。救える者を救う判断が、過去との対比になる。

第16話
文書保管庫の影から、管理官家族と写しに関わる危機が見えてくる。紙、封緘、保管場所をめぐる工作の中で、黒燈は証言と記録を死なせないための保全へ動く。白梟が消そうとする紙片が、次の突破口へ静かに変わっていく。

第17話
記録詰所に残る声を追い、黒燈はセリオと証言を死なせないために動く。ジルは白梟が消そうとするものを、黒燈がどう残すのかを現場で見ながら、協力の意味を測る。残された声を拾うことが、任務の中心になっていく。

第18話
白弦商会の荷馬車を追い、正規便に紛れた裏荷と荷路の線が見えてくる。黒燈は商会全体を敵と決めつけず、関与者と巻き込まれた者を分けながら、レヴィとの衝突へ進む。証拠と人命を同時に守る緊張がさらに高まっていく。

第19話
十日近い照合の末、短札、供述、荷札、封緘の記録が一本の線になり、ラザロ・グレイルの名と慈善夜会が浮上する。ジルは任務外の食事や報告にも少しずつ顔を出す。黒燈で過ごす時間が、居場所の輪郭を静かに作っていく。

第20話
夜明け前の仮眠。翌夜の作戦へ向け、黒燈とジルは装備を直し、証拠を分け、短い休息を取る。甘い距離ではなく、同じ危険へ向かう者同士の静かな間が残る。眠ることを許す空気が、関係の変化をゆっくり静かに示していく。

第21話
慈善夜会の灯りの下、ラザロ拘束と白梟の取引線が動き出す。華やかな表の場に隠された偽文書と逃走経路を追い、黒燈は証人と証拠を守るために配置を進める。夜会の光が、白梟の影を少しずつ静かに照らし出していく。

第22話
偽文書の行方を追う中で、ヴェインと旧水門へつながる逃走線が明らかになる。黒燈は追跡と保全を同時に進め、ジルは白梟側の囮と逃げ筋を読む役割を担う。逃亡者だった経験が、敵の退路を読む力へ静かに変わっていく。

第23話
旧水門戦の後、鍵と残響を手がかりに、残された証拠と痕跡を追う。捕縛された者、逃げた者、守られた証言を整理しながら、ジルは黒燈のやり方を自分の中で確かめる。戦いの後始末が、次の選択の準備へつながっていく。

第24話
話さないことを許す距離が、ジルとルシの間に新しい信頼を残す。過去を無理に暴かず、黙って消えることだけを止めようとするルシの姿勢が、ジルの警戒を少し変える。言葉にしないまま、隣を許す余白が静かに生まれる。

第25話
ジルは自分の条件を示し、黒燈ギルドへの正式加入を自分の意思で選び取る。白梟から逃げる者ではなく、黒燈を選んだ者として立つための、第一部の大きな到達点。所属を与えられるのではなく、自分で選ぶ場面になる。

第26話
正式所属員として迎える朝、ジルは食堂、個室、所属証を通じて黒燈での新しい日常に触れる。月燈館へ区切りをつけ、ルシとクロとともに灯りのある場所へ戻る。逃亡の終わりではなく、戻れる場所を得る静かな締めくくり。